呼び方の見つからない現場

自殺現場.........それも、発見が遅れ、腐敗が進んだ状況を、私はどう呼べばいいのか。
ときどき迷う事があります。
孤独死という言葉では、何かが足りない。単に「自殺現場」とだけ表現してしまえば、その後にある現実も、重さも伝わらないような気がしてしまいます。
いまだにしっくりとするような、納得のいくような言葉が見つからないでいます。
それが自殺され、日数がたって発見された現場になります。
当社では、こうした現場で特殊清掃を行っていたりします。
詳しくは孤独死特殊清掃のご案内をご覧いただければと思います。
今回の作業は、実は当社が法人化する前の10年以上も昔に行ったものをフェイクを加えつつ思い出しながら書いてみたいと思います。
タイトルにはSEO対策でさいたま市内とは記載しておりますが、実際の場所とは異なります。
フェイクを若干多めに交えつつも、現場の雰囲気と作業の一部始終はほぼ事実に基づいて書いております。
一本の電話

きっかけは一本の電話だった。
受話器越しの声は女性のもの。亡くなった方のお母さまだった。
「娘が自殺しちゃったのよ。近所からクレームが来ているので何とかして欲しいの。借金して、それで自殺しちゃったみたいなの。」
あまりに淡々とした口調に、最初は他人のことを話しているのかと思った。
しかし会話を重ねるうちに、警察から「部屋には入らないほうがいい」「現場は見ないほうがいい」と強く言われていたことがわかった。きっと現実を受け止めきれておらず、話し方がどこか他所事のようになってしまっているのかもしれない。
亡くなったのは30代後半の女性。
死因は自殺で、処方薬を大量に服用して命を絶たれていた。
発見までに約2週間──その間、遺体は腐敗が進み、部屋には強烈な臭いが充満していた。
現場に漂う気配

現場は築数十年のマンション。
エントランスは換気がされており、外では臭いを感じない。しかしエレベーターで現場階に到着した途端、微かに香るお線香の匂いが鼻をくすぐった。臭いをごまかすために誰かが焚いているのだ。
玄関扉の前に立つと、死臭はすでに外へ漏れてきていた。特殊マスクを装着し、ゆっくりと鍵を回す。扉が開いた瞬間、マスクを突き抜けるほどの強烈な臭いが全身を包み込む。
息絶えた場所

室内を進み、亡くなられていた部屋の扉に手をかける。
この瞬間はいつも緊張する。
ドアノブをゆっくり回し、押し開けると、入口すぐの床に黒く変色した跡がくっきりと残っていた。そこには体液が染み込み、フローリングの色さえ変えてしまっている。
視線を移すと、床一面に薬の錠剤が散乱している。大小さまざまな処方薬のラベルが混ざり合い、半分飲みかけのペットボトルが転がっていた。ベッドの掛け布団はねじれ、まるで誰かが苦しみの中で身をよじったまま動かなくなったかのようだ。
室内を飛び交う大量のハエの羽音が、異様な静けさの中でやけに耳につく。
壁際には化粧ポーチや日用品がそのまま残されており、つい数週間前までこの部屋で日常があったことを物語っていた。
しかし、その日常は、薬を手に取った瞬間から、急に断ち切られてしまったのだろう。
見積もりと準備

お母さまから依頼されていた小物箱を回収し、部屋の構造や家財の量を確認する。
管理事務所とも打ち合わせを行い、その日のうちに見積書を作成。翌々日、「お任せします」との連絡が入った。
通常であれば、まず一次処理を行って臭いを軽減し、ご遺族に捜索していただくケースも多い。だが今回は、警察の助言もあり、遺族は部屋に入らず、全て当社に任せたいとのことだった。
作業の始まり

作業は亡くなられていた部屋から開始した。スタッフは部屋ごとに分かれ、遺品を「残す物」と「処分する物」に仕分ける。
不要品はすぐに袋詰めし、階段で階下まで搬出する。これは、エレベーター内に臭いが残らないようにするための配慮でもある。
荷物があらかた無くなると、カーペットを剥がす工程に入る。ここが最も慎重さを要する作業だ。
五感で感じる撤去
カーペットの撤去に取り掛かる。
カーペットをめくり、ゆっくり剥がすと、裏側にはべったりと体液が染み込んでいる。手袋越しにも感じる強いぬめり。
カーペットを剥がす瞬間、ネチャッという湿った音が響く。糸を引くような粘度の高い体液がカーペットと床の間で繋がり、糸を引く。
臭い、見た目、音、触感など、一つ一つはさほどメンタルにくることはない。
しかし、全てが合わさるといくら作業自体は慣れているとはいえ、ウッっとくることはしばしばある。
体液はフローリングにも広がっていた。体液が付着した箇所を薬剤で洗浄する。
撤去作業は単なる片付けではない。目、耳、鼻、肌、そして心──五感のほとんどで、この場の現実を受け止めながら進めることになる。
引き渡しの日
引き渡しの日。
お母さまは静かな足取りで室内に入られました。
作業前に満ちていたあの強烈な臭いは、もう残っていない。
代わりに漂うのは、薬剤のわずかな香くらいでした。
部屋を見渡すお母さまの視線は、まるで何かを探しているようでした。
家具はなく、壁や床は張り替えられ、清掃後の整然とした空間が広がっている。
それでも、お母さまの目には、娘さんが暮らしていた頃の光景が重なっているのかもしれません。
「娘の部屋を見せてほしい」と言われ、亡くなられていた部屋へ案内した。扉を開けると、新しいコンパネが張られた床が目に入る。
「ベッドは……そこにあったのよね」
警察からはある程度のことは知らされていたのかもしれません。
お母さまは床を見つめながら、「あそこからここまで転がってきたのかしら。苦しんだのね……」
そう言った瞬間、声が震え、堰を切ったように涙が溢れた。
残された言葉
涙を拭ったお母さまは、ぽつりぽつりと娘さんのことを話し始めた。
「真面目でね……引っ込み思案で、人と打ち解けるのが苦手な子だったの」
恋愛の話になると、「いい人に想いを伝えられても、びっくりして拒否しちゃうような……そんな子だった」と苦笑いを交えながら語った。
遺書には借金のことも書かれていたという。その額はわずか100万円余り。
「そんな金額で死ぬなんて……」
お母さまの声には、怒りとも悲しみともつかない複雑な感情が滲んでいた。
きっと、金額の多寡ではなく、娘さんの中ではそれが最後の一押しになってしまったのだろう。
お母さまは何度も「もっと話を聞いてあげればよかった」と呟き、部屋の隅を見つめていた。
今後もこうした現場は続くだろう。
それでも、残された人のために、そして故人の尊厳を守るために、私たちは全力で仕事を続けたいと思います。
特殊清掃は、単なる「片付け」ではない。悲しみと向き合い、少しでも次へ進むための橋渡しだと、改めて思う。
おわり
文 高橋啓介、尾上明子
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